マノン・レスコーはフランスの作家アベ・プレヴォーの小説が基となっており、マノンとデグリューの波乱に満ちた恋愛と葛藤を描いています。
今回私は1幕で宿屋主人、3幕では合唱(市民役)として出演させていただきました。主要キャストの西さん、村上さん、須藤さんという3人の名ベテラン歌手と多く接する機会に恵まれ、声はもちろんのこと、舞台上でのキャラクターの演技方法や感情の表現について学ぶことができました。彼らから得た経験は私にとって大きな財産であり、何より本番での村上さんの名演は今思い出しても震えてしまうほどです。3幕で船長へ船へ乗せてくれと懇願するシーンでは魂がこもり迫力があり心の底からcoraggio!!!と叫びました。舞台上でも目に涙を浮かべていた出演者もいたのは人生でも初めて見た光景で、あの名演には船長も乗船許可を出さざるを得なかったことでしょう!
今作品に関わった全ての人が音楽に対する熱意を持っており、キャストや合唱団関係なく、舞台をより良くするための方法や自身のキャラクターの感情や動きについて深く話し合うことができました。これにより、作品への理解が深まるとともに、コミュニケーションの取りやすい環境が築かれていました。稽古場がコミュニケーションの場であることは、良い作品を作り上げる上で非常に重要であると痛感させられました。この現場の雰囲気の良さの根幹はやはり西さんの持つお人柄の良さからくるものであり、マノンという大役で自分のことに集中しておきたかったであろう中、皆のことを気にかけいつでも誰より明るく現場を引っ張ってくれていました。そんな西さんには音楽家はもとより人として尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。
そして、今回演出はじめ、所作やキャラクターの精神面など沢山教えていただき、お世話になりました須藤さん。その須藤さんの仰った「自分たちはお客様に喜んでもらうためにオペラをやり、そのお客様の喜びが自分たちにとっての幸せになるんだ」というお話は、音楽家として生きている自身にとって最も大切なエピソードでありました。今後の人生でもその心を忘れず、音楽家人生を全うして生きたいと思います!
山本将生(やまもとまさみ)バリトン